JFEエンジニアリングの制御技術部は、環境プラント(ごみ処理施設=清掃工場)の電気、計装、制御全般を担当している。地方自治体を中心としたニーズに対応し、プラントの設計から工事設計、試運転までを行っている。
近年はごみを焼却した排熱エネルギーを発電に活かしたり、焼却灰を溶融して道路の路盤材に有効活用するなど、資源循環型のプラントも数多く創っており、環境への貢献度も大きい。
入社以来、国内各地や海外でごみ処理施設の建設に当たり、経験豊富でグループマネージャーとして制御技術部を牽引しているベテラン技術者の遠藤さん。入社時に遠藤さんの下でいろいろ学び、今では中堅技術者として活躍する原田さん。現在も宮崎県延岡や栃木県那須などの清掃工場の建設で二人は協力して仕事を行っている。
気心知れた上司と部下の関係から、仕事のやりがい、エンジニアの育成過程が見えてくる。
──お二人は仕事上、どのような関わりがあるのでしょうか?
【原田】 入社して最初に横浜の金沢清掃工場の建設に取り組んだのですが、その時に遠藤さんが上司で、いろいろ教わりながら仕事を一から覚えていきました。
【遠藤】 原田ももう入社10年以上経ったけど、現場の動きの全てを分かるようになったので、今ではポイントポイントで気づいたことを指摘するくらいだね。
【原田】 仕事ではたまにお客様との交渉が難航したり、トラブルが発生する時があります。例えば設計通りに機械が動かなくなり、袋小路に入ってしまったと感じた時には”遠藤さん頼み”になりますよ。
【遠藤】 よく言うよ。無理に先輩を持ち上げなくてもいいよ(笑)。
──制御技術部の仕事内容はどんな中身になりますか。
【遠藤】 地方自治体のニーズに応えて、当社がごみ処理施設、いわゆる清掃工場を受注して設計から建設、あるいは改修、機器の試運転までを担当します。案件によっては、その後の維持管理まで担当することもあるよね。
【原田】 そうですね。私たちは電気技術者としてごみ処理施設の電気、計装、制御関係の全てを見ていくのが仕事です。お客様の要望を受けて設計し、電気メーカーや計装メーカーに意向を伝えて電気計装関係の製品を納入、工場に据え付けて試運転がうまく行くよう現場に立ち会います。もちろん社内の建設や機械設計担当者と連携します。大学で学んだ電気工学的知識も役立ちますが、会社や現場でいろいろな人と関わる中で覚えることの方が圧倒的に多いですね。
──上司として、入社した時の原田さんの印象はどうでしたか。
【遠藤】 論理的な思考回路がきちっとしている印象を受けました。電気の仕事はロジックを組んで、シーケンス(回路図)を組み立てる必要があるのだけど、私が10のうちの3を言えば10を理解してしまうくらい、呑み込みの早さはずば抜けていた。だから、手のかからない部下でした。ただ大人しくて人見知りの部分があったから、もっと図々しいくらい人にぶつかってもいいかなとは思った。
【原田】 遠藤さんはご覧のように実にパワフル、お客様との交渉力はずば抜けているんです。困難な案件も乗り越えていく、その言動には今も見習うことが多いですね。
【遠藤】 原田はどちらかというと慎重派。自分はイケイケGOGOだから、上司と部下という関係では理想かもしれない。あと、お客様とは本音の部分で話さないと、末長い信頼関係を結べないんです。理論武装だけして対応しても、後でほころびが出る。お客様とは常に胸襟を開いて何でも言い合える関係をつくる、技術者もそういう姿勢が大切ですね。
──ごみ処理施設の最近の動向に特徴はありますか。
【原田】 最近は技術革新が早く、どんどん進化しています。常に勉強も大切ですが、自分に新しい技術をどんどん取り込めることは面白いですね。近年は有線だったものを、無線で信号を飛ばして機械制御する動きもありますね。
【遠藤】 いわゆるいつでもどこでも、といったユビキタスだよね。以前は中央監視室で操作していたのが、一般の事務所に無線で飛ばしたり、機器を持ち歩いて監視したりできるようになってきた。これ以上言うと、企業秘密になるから止めておこう(笑)。
──この仕事のやりがいは、どんなところにありますか。
【原田】 電気メーカーでは電気技術者は当たり前にいると思いますが、プラントを手掛ける当社では電気技術者は非常に重宝され、頼られていると感じることができますよね。
【遠藤】 確かに。”電気屋”として希少価値があるので、大きな仕事を任されるチャンスが非常に多い。特に大きなモノづくりに携われることはやりがいだよね。パソコンや液晶テレビといった電化製品は、様々なところから部品を集めてシステム化していく点は、仕事のやり方として共通するところがあるけど、扱う商品としては小さい。一方、こちらは社会インフラとして何百億という額のプラントを手掛ける。いわば豪華な一品料理を作るコックともいえるわけで、しんどいけれど完成して運転がスムーズに行けばそれだけ喜びは大きい。
【原田】 自分たちの手がけた施設は、地図にも残っていくので、その醍醐味もありますね。
【遠藤】 それと、私はあと2つの県を回ると日本の都道府県の全てを踏破したことに。仕事を通して全国各地の名産を味わえるのも、ちょっとした楽しみではあります(笑)。
──まだまだごみ処理施設の需要はありますか。
【遠藤】 建設してから20年・30年が経っているごみ処理施設が多くなっていますので、最近では新しい技術を導入してのリプレース、つまり改修需要が非常に増えています。
【原田】 しかも環境問題の中で、低公害化、CO2削減などの課題に取り組むので、社会貢献性の高さも実感しています。
【遠藤】 確かに。ごみを焼却するエネルギーで自家施設の電力をまかなっているし、余ったエネルギーは電力会社に売っている施設も圧倒的に多くなっています。間違いなく循環型社会に貢献していると感じますね。
──入社後、新卒者の流れはどんな感じですか。
【原田】 新卒者は約一ヵ月の入社時研修があり、その後制御技術部の中を見て回り、6月以降はOJTで覚えていきます。最初のうちは上司や先輩に道筋を示してもらって、あとは自由裁量でやらせてもらえる感じですね。
【遠藤】 入社当初は、会社が培ってきた仕事の手順といった基礎はしっかり教えて、コアをつかんでもらいます。その後の応用部分は比較的自由に取り組んでもらいます。あれこれ言いませんが、任せっぱなしというわけでもない。私がグループマネージャーとなってから特に心がけているのは、部下がオーバーワークになっていないかどうかを判断すること。普段の表情や口ぶりから体調や精神面をきちんと見守っているつもりです。
【原田】 ありがとうございます(笑)。私もお客様との付き合い方、マネージャーとして何が大切かは、遠藤さんの対応ぶりを常に見て学ぶことができました。
【遠藤】 当社は規模が大きい割に、ヒエラルキー、階層意識は全然強くなく、自由闊達な気風。ある程度経ったら個人の裁量に委ねて、責任を持って仕事をしてもらいます。そして何かトラブルがあれば先輩が相談に乗る、そんな風通しのいい社風があると思いますよ。実際、当社は役職者も役職では呼ばず、すべて「さん」付けですから。
──どういう若手に期待しますか。
【遠藤】 やはり、コミュニケーションの取れる人。人に可愛がられる人間性がモノをいうと思います。電気電子の基礎学力があれば、知識は仕事をやりながら身につけられるので心配はいりません。それとさっきも言った規模の大きなモノづくりに興味がある人は、ぜひ当社でその醍醐味を味わって欲しいですね。
【原田】 私も同じく、コミュニケーション力は重要だと思います。しかも、言われた内容を理解するとともに、自分で考えて工夫できることが肝心。それと電気技術者ばかりの会社に行くか、違った分野の会社で電気のスペシャリストという感じで力を発揮するのか。当社の場合は後者です。皆さんも希少価値ある存在になってみませんか。